/ 予告編

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 第9話  『パパグマ大作戦』


 倶楽部24を舞台にした、その崇高な使命を持った作戦は、水面下深くゆっくりと開始されたのであった.....。
 とまぁ、いかにももったいぶった書き方ではございますが、ま、大げさな表現はいつものことでございますな。実際内容しょぼくともご容赦願いたく候でございますです、はい。 
 さて本題でございます。あれは今から1年チョイ前の某大会が終わってからの打ち上げの席でのことでございました。
 同席しておりましたTという男が準決勝で大本命を倒し、決勝は残念ながら負けましたが、その話題となりました。
くまのすけ「いやー準決勝快勝だったねー。凄いねー」
T「えへへへ。狙い打ちました」
くまのすけ「というと?」
T「倶楽部24で棋譜調べたら、同じ指し方してたんで、研究してずばり命中です」
準決勝からは二日目、という運営だったんでこういうことができるんですね。更に、このT君自身も結構強いんですが、プロやアマトップの友人も多いんできっと知恵も借りたに違いありません。
くまのすけ「で決勝は?」
T「いやー。決勝の相手は24やらないんで対策練れなかったんですよー(笑)」
てな会話がありましが、しばらくして
T「くまのすけさーん。24のHN教えて下さいよー」
おいおい、って感じですが。まぁT君にマークされる程私も強くはないし、私の24のHNも一目瞭然って感じのHNですが、しかしなぁ、さっきあんな話を聞いちゃうとねぇ。
この後も何度も聞かれましたが、見れば分かるから、ってことでその場は内緒にしておいたのではございます。
 1ヶ月ほど過ぎましたが、この時の会話は心に引っかかっておりました。
 おいらのHNも丸分かりだからなー。マークされるとも思えんけど、何かの時にT君に狙い打たれるのもなんだなー。
といことで一計を案じました。
 ある日のこと研究会で奨励会員のX君に
くまのすけ「.....という訳でな、このHN使ってたまに指しなさい。使う戦法は....85飛が良いかな。たまに振り飛車穴熊も指しといてね」
X君「えーーーーーー」と若干(?)渋る様子なので
くまのすけ「今日のお昼ごはんは美味しかったかな?」
と因果を言い含め、無理やり承諾させたのではございます。
 これで布石はOKでございます。何かの時に24で棋譜を調べる輩がおりましても
(あれー。くまのすけさん、85飛も指すんだ!?しかも結構強いし!)
とびっくりして的が絞れなくなるに違いありません。めでたしめでたしでございます。
 その後。
くまのすけ「X君、どうだ使ってるか?」
X君「えっ...。済みません。今度使います」
という会話が続きましたが、そのうち
X君「くまのすけさん。この前使いました。85飛やりました。でも飛車先突いたら、何故か相手長考しましたよ(笑)」
くまのすけ「よーし。でもばれない様にたまに穴熊も指しておくように(笑)」
X君「はーい(笑)」
となりまして、ついでに
くまのすけ「もしチャットで話しかけられたら、ハイとかイイエとかサァとか適当に受け流しておくように(笑)」
と指示を出しておきました。チャットで「くまのすけさんですか?」と問いかけられることが多いもので。
 とまぁ、そんなことがありましたが、X君も自分のHNがメインですので、目立たず程よい仕込みと思っていたのではございますが....。

 さて、作戦開始後9ヶ月程、作戦が遂行されていることすら忘却の彼方へ行っておりましたある日のこと。
知人のI君「くまのすけさん。昨日なんですけどね。24やってたら、パパグマってやろーが将棋やってたんですが、こともあろーに矢倉なんかやってるんですよー。しかも堅気の人間が指してちゃいけない時間に指してましたよー(笑)」
勿論、I君はパパグマが私のHNだっていうのは承知の介です。
くまのすけ「で、何でその堅気が指してちゃいけない時間に指してたこと知ってるの?(笑)」
と切り返しておきましたが、(う〜ん。矢倉かぁ。まぁ矢倉も茨城予選じゃたまに指すし、全国大会でも使ったことあるから良いか)
と思ったのではございますが...。
 この日を境にして、大会などで雑談時、私に報告する方が急増いたしました。
その1
茨城強豪Nさん「昨日はありがとうございました」
くまのすけ「えっ?」
Nさん「昨日24で。相矢倉の将棋が私です。チャット苦手なもので失礼しました」
くまのすけ「....あっ(何だまた矢倉かい)いえいえ。私もチャットは苦手ですし....。(ニヤッと笑って)そのHNが必ずしも私ってわけじゃないですし...」
Nさん「えっ、あ、そ、そうですね...」
とまぁ何とかお茶を濁しまして。
その2
全国的強豪、元アマ王将H田氏「くまのすけさん、H野君が言ってましたよ。パパグマが角換りやってました。経歴詐称だ!って言ってました」
くまのすけ「ん?角換りはおいらの裏芸だぞー(笑)」
とまぁこの辺までは良いとして。
その3
同じく全国的強豪で人格者のサンダークロスさん「くまのすけさん、昨日観戦しました。矢倉も強いんですねぇ」
うっ、と思いつつ「いえ、所詮ネットですからー」(流石に心が痛みました)

う〜ん。どうもX君、自分のHNはおいといてパパグマを使いまくっている様子です。点数も気がつくと2700点超えてます。(ウヒャー)
ついにこんな人も出てきまして。
その4
全国的強豪Ayuさん「くまのすけさん。パパグマって誰ですか?くまのすけさんにしては点数高すぎるし」
って、あんた失礼な。とは思いましたが、まぁおっしゃる通りですねー。

ということで、約1年ほど続きましたパパグマ作戦でしたが、本来の目的を達成することなく、終了ということでございます。
まぁ元々がどうでも良い作戦ではございましたが、1話分のネタになったから良し、としましょう。
ところでX君の正体ですが、既にご存知の方もおいでのようですが、取りあえず内緒ということでお願いいたしまする。

 今回も今までにも増して下らない話ではございましたが、お付き合いいただきありがとうございました、と感謝感謝でございます。
 <第九話了、第十話親子熊に続く>