リレーエッセイ 美馬和夫 第28回
『ミマグマ日記』
美馬和夫






 改めまして、リレーエッセイ御指名ありがとうございます。
古賀さんほどの方からバトンを受けられうれしい限りです。それにしても市民栄誉賞ですか。素晴らしいですね。受賞に向け動いてくれる方がいる。アマ名人の実績も当然ですが、やはり古賀さんご自身の魅力、人柄、人格等によるものなのでしょうね。
 古賀さんの今後の更なる活躍大いに期待しております。

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 さてエッセイ開始ですが、最初の予定と内容が変ってしまいました^^。
 最初の予定は、タイトルは<将棋狂の詩>サブタイトル〜将棋狂と将棋好きの一線を探る〜という訳の分からないテーマで、実例を挙げて仮説を検証していくという、これまたどうでも良い内容でございましたが、諸般の事情により変更。とある将棋好き親父の一日ということで、楽しんで読んで頂けるか分かりませんが、まぁこんな奴もいるということで。

平成16年2月29日 茨城常南支部(百人支部)支部名人戦予選

 今日は常南支部の支部名人戦。茨城県大会はベスト8で飛んでしまったため2回目のチャンスに必勝を期して、といったところです。
 とはいえ私、最近堕落してます。
 1.棋譜並べてません 2.詰め将棋あんまりやってません 3.研究してません
 4.運営手伝っちゃってます 5.真面目に仕事しちゃってます(笑)...その他諸々です。

 これではいけません。××氏とか○○氏のようにもっと将棋に集中しなければなりません。
 理想は一週間ぐらい休暇取って、棋譜並べ&詰め将棋&実戦&研究&イメトレ・・・・というところですが、速攻で、クビになって、離婚というコースに乗っかってしまいます。私、小心者で単なる将棋好きの一般人なのでそれは避けたいと思っております。ちなみに私、強引に将棋旅行に出かけて、家に帰ったら誰もいなかったのは、過去ほんの数回。可愛いものでございます。

 とまあ、結局大した準備もなく(リレーエッセイのネタを検討してたぐらいですかね)当日朝を迎えてしまいました。
 あぁ、たった一つの準備らしきものは、いつもはリポビタンDを持っていくのを、ユンケルにしてみたことぐらいでしょうか(笑)。

 さて当日の朝。いつものように私のお抱え運転手が迎えに来ました^^。I氏、法政OB、牛久市在住。最近結婚しまして幸せの絶頂でございます。それにしても新婚なのに奥さん置いといて将棋指してて大丈夫なのでございましょうか。(コンサートとか、買い物とか、色々苦労があるようですが)

 さて40分程で到着。
(さあ、今日マークする相手は、小川氏:週刊将棋元編集長、玉置氏:昨年支部名人戦東日本ベスト4、佐々木氏:神大OB、中根氏:元茨城名人ってところか...週刊将棋にも告知したから他にも来るかもしれないなぁ)常南支部予選は代表になったら常南支部会員になってね、ということにして会員増を図ろうとしてます。個人的には、常南支部会員になっていないのに支部代表戦に出るのは納得がいかないのですが(支部名人戦は支部活動の延長線上にあると思っています)、常南支部は川嶋支部長が30数年前に設立し、会員を増やして百名以上を維持してきております。そのご苦労を考えると、意見は言っても反対はできません。

 会場に入っていくと.......。
 なにやら見覚えのある物体が恥ずかしそうにクネクネしています。「正和じゃん!」思わず声に出しておりました。思えば私も勝負に対する執念がなくなったものです。これが10年前なら、「正和!ここは俺の縄張りだ!来るんじゃねー帰れー!」ぐらいは言ったかもしれません^^。今日は不覚にも(おぉ、リレーエッセイのネタがやってきた)と思ってしまいました(笑)。

 正和「美馬さん、来ましたー」
 美馬「来なくて良いよぉ」
 正和「遠藤さん、松本さん、池田さんも誘ったんですけどー」
 美馬「俺に断りもなく、誘うんじゃないよぉ(しかもなんだよぉ、その面子はぁ)」
 正和「はー、すいませんー」
 美馬「ところで常南支部には入会するんだろうな?」
 正和「...はいー。入らせて頂きますー」
 なかなか素直な奴です。
 一応常南支部規定では優勝したら向こう3年間は支部入会すること、で優勝する前に入会することは必要ないのですが^^。
 美馬「県大会は埼玉か茨城か1箇所しか出れないよ」
 正和「はいー、茨城で出ますー」
 美馬「日立でやったりするよぉ、遠いよぉ」
 正和「はいー大丈夫ですーどこでも行きますー」
 美馬「よおしぃ、偉いぞぉ(来なくていいぞぉ)」
 美馬「支部大会を毎月第一日曜日にやってるから、たまには来いよぉ」
 正和「はいー来ますー」
 美馬「優勝はテレビだからなぁ(車がないと持って帰れんぞぉ)」

 ....てな会話がありまして、そうこうする内に参加者が集まってきます。すると何名もの人が、
 「美馬さん、あそこの吉田って奴ですけど....」と報告に来ます(笑)。流石、正和君、ここ茨城でも有名です。大したものです。
 私が茨城に来て最初に出場した県大会で勝ち抜いた時なんか、「美馬さん強いねー。職団戦は?A級?だから強いのかー」って感じでほとんどノーマークだったんですけどねぇ。
 
 ということで個人戦参加者は、県外の(タコみたいな)サメが一匹。県内のマグロ、カツオが数匹、県内外の迷い込んだイワシが数匹というところでしょうか。もし遠藤君や、松本君や、池田君までが来ていたら...。北東北の人たちの心境がとても良く理解できたことでしょう。

 さぁ、開会式も終わり大会開始。A級は10名。私がルール説明です。
「ルールは....持将棋は...進行は....今日は5回戦方式です。負けが込んでも帰らないで下さい(笑)」2連敗すると帰る人多いんですよねぇ。そうすると、後半組み合わせができなくなること多いんです。まぁ、優勝しか意味のない大会で5回戦方式ってのがそもそも間違ってるような気がしますが、これがこの支部の伝統なのでなかなか変えられません。

 1回戦の組み合わせは、正和−中根、小川−美馬。
 正和君あっという間に圧勝。(正和を止められる奴はいないよなぁ。自力で頑張るしかないかぁ)
 小川君との将棋は、優勢→大事に指そうと受けに回る→食いつかれる→敵陣手付かず必敗→受けが無くなり最後の突撃→なぜか命中大逆転。生き残りました。

 2回戦で早くも正和と。気合が入りました。彼にはいままで必勝も、優勢も、不利も関係なくすべてやられてます。そろそろ勝っても良いんじゃない?と思ってましたが。
 戦形は正和君居飛車穴熊模様、私四間飛車穴熊模様。早めに(私後手)54銀から65へぶつけ、美濃囲いにし、居飛車穴熊が中途半端な内に急戦を仕掛ける研究手順。
 優勢...だと思ったんですけどねぇ。一方的に飛車が成って、相手の穴熊薄いし、と金もすぐ作れて銀と交換できるんです。なのに....。美濃囲いって薄いですよねぇ。仕方がないので粘りました。92香上がった美濃囲いだったんで、71銀打って91玉潜って82銀上がって....。粘っただけでした(217手)。残念無念。(優勢と信じていたときは、ほほをピシピシしながらトイレで気合入れてたんですけどねぇ)
 この後は崩れ落ちそうになりながらも、運営しながらキャンセル待ちで頑張りました。(二連敗して帰ろうとする人を引き止めつつ...最後に正和と指す人がいなくなっちゃうので)が、結局消化試合でした(シクシク)。
 正和君は最終戦も横歩取り対85飛を序盤作戦負けながら、じっくり指し逆転勝ちしておりました。強いですねぇ。
 感想戦では
正和「ひどい作戦負けでした。横歩取りは余り知らないので自信なかったですー」
佐々木「そう?」
美馬「佐々木君、言葉通りに取っちゃいけないよ。正和、余り知らないって、棋譜は千局ぐらいしか並べてないってことか?(笑)」
正和「いやーそんなー150局ぐらいですー」
 とまぁ、優勝は正和君。常南支部の名前で、是非全国優勝して欲しいものです。

 さて同行のI君は団体戦の代表戦に出ておりましたが、残念ながら次点でした。
最後は遠くから来た正和をせめてJRの駅までは、と佐々木君に車で送ってもらうように手配し解散。
 帰りの車中は盛り下がりましたねぇ。でも別れ際、I君は「これからケーキ買って帰ります。レーティングの茨城予選に出られるよう頑張ります」美馬「俺も来週、東葛支部予選に出られるよう頑張るよ」すでに次の大会に向けての戦いは始まっております。まずは無事大会に出られるよう、頑張りたいと思います。 

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 さて、次は伊藤大悟君にバトンを引き継ぎたいと思います(裕之介さん連絡お手数お掛けいたしました)。伊藤君は、ご存知のように若干15才でアマ竜王戦出場。その他、中学生王将、中学生名人、高校竜王、アマ準竜王。才能と実績のある少年にバトンを渡せることができて、嬉しく思います。
では、雑文にお付き合い頂きありがとうございました。<将棋狂の詩>は、まぁその内機会があれば書き上げたいと思います。



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