リレーエッセイ 古屋  皓介 第9回
『思い出の一局』
古屋 皓介






山本善光さんからバトンをいただいた古屋です。今回はいままでの流れとは違いますが自戦記っぽい内容でいきたいと思います。つまらないとは思いますが頑張って書くのでよろしくお願いします。

思い出の一局

さて、将棋を指す人には誰もが思い出に残る将棋を持っていると思うのですが、今回僕は去年のアマチュア名人戦全国大会の将棋のことを中心に書いてみたいと思います。
一年以上も前の話ですが、その頃の僕の将棋はただ攻めるだけの棋風で今も十分弱いですが、そのころは鬼のように弱かったと思います。それでも十回に一回くらい攻めがヒットして、たまに強豪に勝ったりもしました。しかし安定した力がないので結局は勝ち続けることはありませんでした。そのころの僕の将棋は「固めてポン」(穴熊に囲って適当に攻める・・・これは今でもあるパターン)や、自爆流 山梨三荒などと呼ばれていました。しかし今までずっと県大会では勝てなかったのですが、その年の夏は何故か絶好調で竜王戦三位、さらにアマ名ではなんと優勝して、初の一般県代表を勝ち取ることが出来ました。しかし内容は凄まじく、穴熊が自玉の端歩をついて殺到するというまさに自爆流の内容でした。しかしそこで自信を得た僕は中学選抜の全国大会でも優勝と、まさに恐るべき勢いでした。が、そのあとの中学生名人戦ではなんと二連敗で予選落ち・・実力が備わってないことがバレバレでした・・・・・。普通ならこれで夏が終わってしまうところなのですが僕にはまだアマ名全国大会が残されていました。中学生の大会でも予選落ちするくらいだから一般で予選を通過するのはきついと思い、勉強のつもりで全国に臨みました、が全国のいいところは新しい友人が出来ることで前日は同世代の人達と将棋を指して深刻な気分は吹き飛んで新鮮な気分で将棋が指せそうでした。
予選第一局 僕の三間飛車に、相手は天守閣美濃 玉と玉が向かい合っている感じなのですが、思い切って自玉付近の歩を次から次へと突き捨てました。自分では決まっているつもりだったのですが、受けの好手を見落としていて突き捨てた歩が全部自玉への脅威になってしまっているという悲しすぎる仕掛けに終わってしまいました。これではまさに自爆流なのですが、ここからがいつもと違いました。アマ名は持ち時間が長いのでとりあえず気分転換する余裕がありました。落ち着きを取り戻した僕は受けの勝負手を連発してなぜか怪しくすることに成功しました。その後は今までにない落ち着いた指し回しで大逆転勝ちをおさめることが出来たのです。受けが成功して勝つパターンは山梨三荒には考えられなかったので大舞台でそれが出来たこの勝利はとても充実感がありました。実は二連敗でその日のうちに山梨へ帰ることを恐れていたので、とりあえずそれだけは避けられてここではかなり気分がよかったです。

予選二局目 僕の後手三間飛車に相手の急戦(55歩から45突くやつ)この戦型は経験豊富なのでいけるかと思ったのですが、研究不足であっさりド不利になってしまいました。しかしこの日の僕は人が変わっていました。執念の粘りを見せてまたも流れを変えることが出来たのです。最後はなんと入玉して(この戦型で美濃が入玉するのは珍しいのでは・・)勝ってしまったのです。実は僕は入玉すらまともにしたことがなかったので、またも新しい勝ち方をマスターでき、まさかの二連勝予選通過を果たしてしまったのです。この時は流石に嬉しかったです。予選三局目は観戦、それからみんなで牛丼を食べに行ったり、また少し将棋を指したりしてその日を過ごしました。
本戦一回戦 僕の三間飛車に相手の天守閣美濃 予選一回戦と似た感じですが、僕がうまく捌いて指しやすくしました。しかしその後指しすぎが出てしまい、逆にピンチに、が、ここでは受けの感覚に慣れていて、またもうまく攻めをかわしました。これはいけると思ったのですが、そこで痛恨の寄せが出てしまい一遍に負けになってしまい流石に快進撃もここまでとなってしまいました。これを勝っていれば次が優勝者だったので惜しかったですが、実力以上のものが出せたし順当にいけば予選落ちだったのをここまで勝てたので出来すぎでしょう。友人と将棋も指せたし、そしてなによりも自爆流から卒業できそうになったので素晴らしい三日間でした。
その後はすぐには勝てなかったのですが、少しずつ力をつけて今年の一月のオール学生ではなんと準優勝することが出来ました。内容も苦しい将棋は粘って勝ったり、無理攻めには受けて勝ったりとなかなか満足のいく感じでした。決勝は従来の固めてポンで行きましたが、流石に相手も強いしオール学生で勝てる力はついてはいなかったと思います。結果は完敗とまたもや惜しかったですが、これもととても嬉しかったです。その日は田中さん、若林さん、晃さんの応援に、一瀬さんの記録と普段お世話になってる方がパワーをくれたのもとても大きかったです。この時が今までで一番強かった時のような感じがするので、これを上回る実力と実績を早く残せるよう頑張ります。
最後に強くもないくせに将棋の内容についても語ってしまったので少し生意気な文章になってしまったと思いますがお許しください。ありがとうございました。
次はいろいろな面でお世話になっている一瀬浩司さんにバトンタッチしたいと思います。



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